2026年度から強制適用が迫る「新リース会計基準」について、「いつから適用?」「実務への影響は?」といった疑問をお持ちではありませんか。本記事では、IFRS第16号等を基礎とする新基準の要点を、図解を豊富に用いて世界一わかりやすく解説します。この記事を読めば、新基準の結論である「原則すべてのリースを資産計上(オンバランス化)する」ことの具体的な意味、旧基準との違い、対象企業、そして「使用権資産」と「リース負債」を用いた会計処理の仕訳例まで、3分で基本を理解できます。さらに、財務諸表や経営指標への影響、今すぐ着手すべき対応ロードマップ、Excel管理の限界とシステム化の必要性まで、実務担当者が知りたい情報を完全網羅しています。
新リース会計基準とは 3分でわかる基本のキ
新リース会計基準とは、これまで費用処理(オフバランス)が認められていたオペレーティング・リース取引を含め、原則としてすべてのリース契約を資産および負債として貸借対照表(BS)に計上(オンバランス化)することを求める新しい会計ルールです。これは、国際的な会計基準であるIFRS第16号「リース」や米国会計基準「ASC842」の内容を日本の会計基準に取り入れたもので、企業の財務状況をより正確に投資家へ開示することを目的としています。
この改正により、リースを利用する「借手」側の企業は、リース契約の開始時に、リース資産を使用する権利として「使用権資産」を資産に、将来のリース料支払義務として「リース負債」を負債に計上する必要があります。これまで費用として損益計算書(PL)に計上するだけだった多くのリース契約が対象となり、企業の財務諸表に大きな影響を与えることになります。
なぜ今リース会計基準が改正されたのか
リース会計基準が改正された最大の理由は、企業の財務諸表の透明性を高め、国際的な比較可能性を確保するためです。従来の会計基準では、多くの企業が利用するオペレーティング・リースが貸借対照表に計上されず、「オフバランス」となっていました。
これにより、投資家からは「多額のリース契約を抱えているにもかかわらず、それが財務諸表に現れないため、企業の本当の負債規模がわからない」という問題点が指摘されていました。航空会社が航空機をオペレーティング・リースで調達しているケースなどが典型例です。新リース会計基準は、このような「隠れた負債」をなくし、投資家がより適切な投資判断を下せるように、国際的な会計基準との整合性を図る目的で導入されたのです。
旧基準からの変更点をわかりやすく比較
新リース会計基準における最大の変更点は、借手側の会計処理です。旧基準では「ファイナンス・リース」と「オペレーティング・リース」に分類し、後者は賃貸借処理としてオフバランスが認められていました。しかし、新基準ではこの区別が原則としてなくなり、単一の会計処理モデル(使用権モデル)が適用されます。以下の表で、借手側の会計処理の変更点を整理しました。
| 比較項目 | 旧リース会計基準 | 新リース会計基準 |
|---|---|---|
| リースの分類 | ファイナンス・リースとオペレーティング・リースに分類。 | 原則として分類なし(単一モデル)。 ※ただし短期・少額リースの特例あり。 |
| 会計処理(借手) |
|
|
| 財務諸表への影響 | オペレーティング・リースはBSに計上されず、企業の総資産や負債が実態より小さく見える可能性があった。 | これまでオフバランスだったリースもBSに計上されるため、総資産と負債がともに増加する。 |
このように、新リース会計基準の核心は、これまで費用処理していたオペレーティング・リースも資産・負債として計上(オンバランス化)される点にあります。これにより、企業の財政状態がより実態に近く表示されることになります。
新リース会計基準はいつから適用?対象となる企業はどこ?
会計担当者にとって最も気になるのが、「新しいリース会計基準がいつから始まり、どの企業に影響するのか」という点でしょう。ここでは、新基準の適用時期と対象範囲について、具体的な日付や企業の規模に触れながら詳しく解説します。
強制適用の開始時期
日本の新しいリース会計基準(企業会計基準第13号「リース取引に関する会計基準」等の改正)は、2026年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から強制適用されます。つまり、3月決算の企業であれば、2027年3月期の期首(2026年4月1日)から対応が必須となります。
この適用は、年次決算だけでなく四半期決算にも及びます。準備には相応の時間がかかるため、適用開始日を見据えて早めに計画を立てることが重要です。
| 決算月 | 強制適用が開始される事業年度 |
|---|---|
| 3月決算の企業 | 2027年3月期(2026年4月1日~) |
| 12月決算の企業 | 2027年12月期(2027年1月1日~) |
早期適用は可能か
はい、新リース会計基準は早期適用も認められています。具体的には、2024年4月1日以後開始する連結会計年度および事業年度の期首から適用することが可能です。すでに国際財務報告基準(IFRS)や米国会計基準(US-GAAP)を導入しているグローバル企業の子会社など、先行して準備が整っている企業は、この早期適用を選択できます。
早期適用を行うことで、グループ全体の会計方針を統一したり、改正後の基準にいち早く準拠した財務諸表を作成したりするメリットがあります。ただし、早期適用には社内体制の構築やシステム対応が不可欠なため、自社の準備状況を慎重に評価した上で判断する必要があります。
対象となる企業とリースの範囲
新リース会計基準は、上場企業や大会社だけでなく、原則としてすべての企業が対象となります。これまでオペレーティング・リースを費用処理してきた多くの中小企業も、会計監査の対象となる場合など、新基準への対応が必要になる可能性があります。
また、対象となる「リース」の範囲も大きく変わります。新基準では、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという従来の区分が廃止され、「識別された資産の使用を一定期間にわたり対価と交換に支配する権利を移転する契約」がすべてリースとして扱われます。これにより、これまで費用(オフバランス)処理していた多くの契約が、資産・負債(オンバランス)として計上されることになります。
| 分類 | 具体的な契約例 |
|---|---|
| 不動産 | オフィス、店舗、倉庫、工場の賃貸借契約 |
| IT機器 | PC、サーバー、複合機のリース契約・レンタル契約 |
| 車両・運搬具 | 社用車、営業車、トラック、フォークリフトのリース契約 |
| その他 | 建設機械、工作機械、医療機器などのリース契約・レンタル契約 |
重要なのは契約の「形式」ではなく「実態」です。契約書に「リース」や「賃貸借」と記載がなくても、実質的に資産を支配して使用していると判断されれば、新基準の対象となるため注意が必要です。
【図解】新リース会計基準の会計処理 使用権資産とリース負債
新リース会計基準を理解する上で最も重要なのが、具体的な会計処理の変更点です。旧基準では、多くのリース契約が貸借対照表(BS)に計上されない「オフバランス」処理が可能でした。しかし、新基準ではこれが大きく変わります。この章では、新基準の会計処理の核心である「使用権資産」と「リース負債」という新しい勘定科目の概念から、具体的な仕訳例までを図解を交えてわかりやすく解説します。
原則すべてのリースを資産計上(オンバランス化)
新リース会計基準の最大の特徴は、原則としてすべてのリース契約を資産・負債として貸借対照表(BS)に計上する「オンバランス化」が義務付けられたことです。これまで「オペレーティング・リース」として費用処理のみで済んでいた賃貸借契約も、これからは資産(使用権資産)と負債(リース負債)を両建てで計上する必要があります。これにより、企業がリース契約によってどれだけの資産を使用し、将来どれだけの支払い義務を負っているのかが、財務諸表から明確に読み取れるようになります。
使用権資産とは
「使用権資産」とは、リース契約に基づき、原資産(リース対象の物件や設備など)を契約期間にわたって使用する「権利」を資産として計上するものです。これは、実際に物件や設備そのものを所有しているわけではなく、あくまで「使用する権利」を資産として認識する、という点がポイントです。使用権資産の計上額は、後述する「リース負債」の当初測定額に、リース契約に直接関連して発生した初期費用(仲介手数料など)や前払いしたリース料などを加えて計算されます。計上後は、有形固定資産と同様に、リース期間にわたって減価償却を行っていくことになります。
リース負債とは
「リース負債」とは、将来支払うべきリース料の総額を、利息の要素を考慮して「現在価値」に割り引いて計算した金額です。簡単に言えば、リース契約における「将来の支払い義務の現在における評価額」を負債として計上するものです。将来支払う100万円と、現在の100万円では価値が異なるという「時間価値」の考え方に基づき、将来の支払額を一定の割引率(借手の追加借入利子率など)を用いて現在の価値に換算します。このリース負債は、リース料を支払うたびに元本部分が返済されて減少し、残高に対して時の経過に応じた支払利息が計上されていきます。
具体的な仕訳例で見る会計処理の流れ
それでは、具体的な数値例を用いて、リース契約開始時から決算時までの会計処理の流れを見ていきましょう。ここでは、以下の条件のリース契約を想定します。
| リース期間 | 5年 |
|---|---|
| 年間リース料 | 100万円(毎年期末払い) |
| 割引率 | 3% |
| リース料総額の現在価値 | 4,580,000円(※簡便化のため仮定した数値) |
ステップ1:リース開始時の仕訳
リース期間の開始日に、将来のリース料支払総額の現在価値を「使用権資産」および「リース負債」として計上します。
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 使用権資産 | 4,580,000円 | |
| リース負債 | 4,580,000円 |
ステップ2:決算時(1年目期末)の仕訳
決算時には、主に2つの処理が必要です。1つ目は「使用権資産の減価償却」、2つ目は「リース料の支払いと支払利息の計上」です。
1. 使用権資産の減価償却
使用権資産をリース期間(5年)で均等に償却します。
減価償却費:4,580,000円 ÷ 5年 = 916,000円
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 減価償却費 | 916,000円 | |
| 使用権資産 | 916,000円 |
2. リース料の支払いと支払利息の計上
リース負債の期首残高に割引率を乗じて支払利息を計算し、支払ったリース料との差額をリース負債の返済額とします。
支払利息:4,580,000円 × 3% = 137,400円
リース負債の返済額:1,000,000円(支払リース料) – 137,400円(支払利息) = 862,600円
| 勘定科目 | 借方 | 貸方 |
|---|---|---|
| 支払利息 | 137,400円 | |
| リース負債 | 862,600円 | |
| 現金預金 | 1,000,000円 |
このように、旧基準のオペレーティング・リースでは「支払リース料」として費用計上するだけでしたが、新基準では「減価償却費」と「支払利息」の2つの費用に分けて計上される点が大きな違いです。この会計処理をリース期間が満了するまで毎年繰り返していくことになります。
実務への影響は甚大 財務諸表と業務はどう変わる?
新リース会計基準の導入は、単に会計処理の方法が変わるだけではありません。企業の財務諸表の見え方を大きく変え、経営判断や日々の経理業務にまで広範かつ甚大な影響を及ぼします。特に、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースを多用してきた企業ほど、そのインパクトは大きくなります。ここでは、具体的な影響を「財務諸表」「経営指標」「経理業務」の3つの側面に分けて詳しく解説します。
貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)へのインパクト
新リース会計基準の最大の特徴は、原則としてすべてのリース契約を資産・負債として計上する「オンバランス化」です。これにより、貸借対照表(BS)と損益計算書(PL)の構造が大きく変化します。
貸借対照表(BS)では、資産と負債が両建てで計上され、総資産が膨らみます。具体的には、資産の部に「使用権資産」が、負債の部に「リース負債」が新たに表示されます。これまで費用処理のみでBSに載らなかったコピー機や車両、不動産などの賃借契約が資産として認識されるため、企業の財政状態の実態がより明確に反映されることになります。一方で、総資産の増加に伴い、自己資本比率は低下する傾向にあります。
損益計算書(PL)では、費用の性質と計上タイミングが変わります。旧基準のオペレーティング・リースでは、支払リース料が定額で費用計上されていました。しかし新基準では、費用が「使用権資産の減価償却費」と「リース負債に係る支払利息」に分解されます。支払利息はリース期間の初期に多く、後期になるにつれて減少するため、費用計上額が期間を通じて変動します。また、支払利息は一般的に営業外費用として扱われるため、営業利益やEBITDA(利払前・税引前・減価償却前利益)が押し上げられる効果も生じます。
| 財務諸表 | 項目 | 旧基準(オペレーティング・リース) | 新基準 |
|---|---|---|---|
| 貸借対照表(BS) | 資産 | 計上なし(オフバランス) | 使用権資産を計上 |
| 負債 | 計上なし(オフバランス) | リース負債を計上 | |
| 損益計算書(PL) | 費用計上 | 支払リース料(定額) | 減価償却費(主に定額)+支払利息(逓減) |
| 営業利益への影響 | 支払リース料の分だけ減少 | 減価償却費の分だけ減少(支払利息は営業外費用) |
ROAなど経営指標への影響
財務諸表の構造変化は、企業の健全性や収益性を測る経営指標にも直接的な影響を与えます。投資家や金融機関はこれらの指標を重視するため、企業は影響を正確に把握し、対外的な説明責任を果たす必要があります。
最も大きな影響を受ける指標の一つが総資産利益率(ROA)です。ROAは「当期純利益 ÷ 総資産」で計算されますが、新基準では分母である総資産が増加するため、ROAは低下する傾向にあります。同様に、負債の増加により負債比率やD/Eレシオ(負債資本倍率)は悪化します。
これらの指標の悪化は、金融機関との融資契約における財務制限条項(コベナンツ)に抵触するリスクをはらんでいます。「自己資本比率を一定以上に維持する」「D/Eレシオを一定以下に保つ」といった条項がある場合、新基準適用によって意図せず契約違反となってしまう可能性も考えられます。そのため、事前に金融機関と協議しておくことが重要です。一方で、前述の通りEBITDAは増加するため、EBITDA有利子負債倍率などの指標の見え方も変わる点に注意が必要です。
| 経営指標 | 計算式 | 影響 | 理由 |
|---|---|---|---|
| 総資産利益率(ROA) | 当期純利益 ÷ 総資産 | 低下 | 分母の総資産が増加するため。 |
| 自己資本比率 | 自己資本 ÷ 総資産 | 低下 | 分母の総資産が増加するため。 |
| 負債比率 | 負債合計 ÷ 自己資本 | 上昇(悪化) | 分子の負債合計が増加するため。 |
| EBITDA | 営業利益 + 減価償却費 | 増加 | 支払利息が営業外費用となり、営業利益が押し上げられるため。 |
契約管理など経理業務への影響
新リース会計基準への対応は、決算時の会計処理にとどまらず、経理部門の日常業務にも大きな変革を迫ります。
まず、経理部門は社内に存在する「リース」の定義に該当するすべての契約を網羅的に洗い出す必要があります。これには、これまで経費処理していた不動産の賃貸借契約や、複合機、PCなどのレンタル契約も含まれる可能性があります。本社だけでなく、各支店や事業部が個別に契約しているケースも多いため、全社的な協力体制の構築が不可欠です。契約の洗い出し後は、リース期間、リース料、重要なオプション(更新、解約など)、割引率といった、資産・負債計上に必要な情報を契約書から一つひとつ抽出・整理しなければなりません。
さらに、使用権資産とリース負債の計算プロセスは非常に複雑化・煩雑化します。当初認識時の計算だけでなく、決算ごとの減価償却費と支払利息の計算、さらには契約内容に変更があった場合のリース負債の再測定など、管理すべき項目と作業量は格段に増加します。これに伴い、決算短信や有価証券報告書で開示すべき注記情報も大幅に増えるため、決算・開示業務の負荷も高まります。このような業務量の増大は、従来のようなExcelでの手作業管理に限界をもたらす可能性があります。
新リース会計基準への対応ロードマップ
新リース会計基準への移行は、単なる会計処理の変更にとどまらず、全社的なプロジェクトとして計画的に進める必要があります。ここでは、実務担当者が具体的なアクションを起こすための指針として、対応完了までの道のりを4つのステップに分けたロードマップを解説します。
ステップ1 全てのリース契約の洗い出し
新基準対応の第一歩は、企業が締結している全てのリース契約を網羅的に洗い出し、その内容を正確に把握することです。経理部門が管理している契約だけでなく、各事業部や拠点が独自に結んでいる契約も対象となるため、全社的な調査が不可欠です。
特に注意すべきは、「賃貸借契約」や「レンタル契約」、「保守サービス契約」といった名称の契約の中に、実質的にリースに該当するものが含まれているケースです。新基準では、契約に「特定の資産を使用する権利」と「その使用を指図する権利」が含まれている場合、リースとして識別する必要があります。この「リースの識別」が、最初の重要な関門となります。
具体的には、以下の情報を契約書や関連資料から収集し、一覧化する必要があります。
| 収集すべき情報項目 | 主な確認内容 |
|---|---|
| 契約の基本情報 | 契約相手先、契約締結日、契約番号など |
| リース対象資産 | 資産の種類(不動産、車両、OA機器など)、数量、仕様 |
| リース期間 | 契約上のリース開始日と終了日、中途解約の可否 |
| リース料 | 月額・年額の支払額、支払スケジュール、変動リース料の有無 |
| 各種オプション | 契約更新オプション、購入オプションの有無とその条件 |
| 付随費用 | 維持管理費用や保険料などがリース料に含まれているか |
この洗い出し作業は、後続のすべてのステップの基礎となるため、最も時間と労力を要する工程です。漏れなく正確に情報を収集することが、対応の成否を左右します。
ステップ2 会計方針の決定と簡便法の検討
洗い出したリース契約をもとに、自社の会計方針を決定します。新リース会計基準では、原則として全てのリースを資産・負債計上(オンバランス化)しますが、実務上の負担を軽減するための「簡便法(特例)」が認められています。この特例を適用するかどうかが、会計方針決定における最大のポイントです。
短期リースと少額リースの特例
簡便法として認められているのは、「短期リース」と「少額リース」の2種類です。これらの要件を満たすリース契約については、使用権資産やリース負債を計上せず、従来通り支払ったリース料を費用として処理することが可能です。
| 特例の種類 | 概要と要件 |
|---|---|
| 短期リース | リース期間がリース開始日時点で12ヶ月以内であるリース。購入オプションが含まれる場合は対象外となります。例えば、3ヶ月間のオフィス機器レンタルなどが該当します。 |
| 少額リース | 対象となるリース資産が新品であった場合の価額が少額であるリース。日本の会計基準では明確な金額基準は示されていませんが、IFRS(国際財務報告基準)では5,000米ドル以下が例示されており、企業の実態に応じて重要性の観点から金額基準を設定します。コピー機やPC、什器などが対象となり得ます。 |
これらの特例を適用することで、多数の少額な契約について複雑な資産・負債計算を回避でき、経理業務の負担を大幅に軽減できます。どの範囲まで特例を適用するか、企業の実態に合わせて慎重に検討し、会計方針として明確に定めておくことが重要です。
ステップ3 リース資産・負債の計算
会計方針を決定し、簡便法の対象外となるリース契約が特定できたら、いよいよ原則処理の対象となる契約について「使用権資産」と「リース負債」の金額を計算します。
計算の基本的な流れは以下の通りです。
- リース負債の計算:将来支払うべきリース料総額を、「割引率」を用いて現在価値に割り引くことで算出します。
- 使用権資産の計算:上記1で算出したリース負債の額に、リース契約締結までに支払った前払リース料や、資産を事業で使える状態にするために直接かかった費用(付随費用)などを加算して算出します。
この計算プロセスで特に論点となるのが「割引率」の設定です。割引率には、原則として貸し手(リース会社)の計算に含まれている利率(貸手の計算に含められている利子率)を使用しますが、これが不明なケースがほとんどです。その場合は、借り手(自社)が同様の資産を同期間借り入れるために必要となるであろう利率(追加借入利子率)を、自ら見積もって設定する必要があります。
この割引計算は契約ごとに必要となり、非常に複雑です。特に契約数が膨大な場合、Excelなど手作業での管理には限界があり、ミスの発生リスクも高まるため、慎重な作業が求められます。
ステップ4 決算・開示業務への反映
ロードマップの最終ステップは、計算した使用権資産とリース負債を実際の決算業務と財務諸表の開示に反映させることです。
決算においては、期末に以下の会計処理が必要になります。
- 使用権資産:定額法など、適切な方法で減価償却を行い、減価償却費を計上します。
- リース負債:リース料の支払額のうち、利息相当額を支払利息として費用計上し、元本返済相当額をリース負債から減額します。
また、新リース会計基準では、財務諸表の利用者に対してより詳細な情報を提供するため、注記すべき開示項目が大幅に増加しています。これまで不要だった情報を新たに収集・集計し、開示資料を作成するための業務フローを構築する必要があります。
主な開示要求項目は以下の通りです。
| 開示項目 | 内容 |
|---|---|
| 定性的情報 | リースの内容、簡便法の適用方針、割引率の決定方法など |
| 定量的情報(BS関連) | 使用権資産の資産種類ごとの期末残高や増減の内訳、リース負債の期末残高など |
| 定量的情報(PL・CF関連) | 使用権資産の減価償却費、リース負債に係る支払利息、短期・少額リースの費用額、リース関連のキャッシュ・フローなど |
| リース負債の満期分析 | 1年以内、1年超5年以内、5年超といった期間ごとの返済予定額 |
これらの決算・開示業務を正確かつ効率的に行うためには、事前の準備と、必要に応じて会計システムの見直しや新たな管理体制の構築が不可欠となります。
Excel管理は危険?新リース会計基準とシステム対応の重要性
新リース会計基準への対応において、多くの企業が直面するのが「どのようにリース契約を管理するか」という課題です。特に、これまで慣れ親しんだExcelでの管理を継続できるのか、あるいは専用のシステムを導入すべきか、判断に迷うケースは少なくありません。結論から言えば、新基準の複雑性を考慮すると、Excelのみでの管理には限界があり、多くのリスクを伴います。ここでは、Excel管理の限界と、リース管理システム導入の重要性について詳しく解説します。
複雑な計算と管理におけるExcelの限界
新リース会計基準では、使用権資産の減価償却やリース負債の利息計算、契約変更に伴う再測定など、旧基準にはなかった複雑な計算が求められます。これらの計算をExcelで手作業で行うことには、以下のような限界とリスクが潜んでいます。
| 課題項目 | 具体的なリスク内容 |
|---|---|
| 計算の複雑性とヒューマンエラー | 使用権資産やリース負債の当初測定、その後の減価償却費や支払利息の計算、さらには契約内容の変更や重要な経済事象の発生に伴う再測定など、計算ロジックが非常に複雑です。数式のエラー、参照ミス、手入力の誤りといったヒューマンエラーが発生する可能性が非常に高くなります。 |
| 管理の煩雑さと属人化 | 企業が抱えるリース契約は多岐にわたり、契約件数が数十、数百に及ぶことも珍しくありません。これらの契約情報を一つのExcelファイルで管理しようとすると、ファイルが肥大化・複雑化し、管理が煩雑になります。結果として、特定の担当者しかメンテナンスできない「属人化」した状態に陥りやすく、担当者の異動や退職が業務停滞の直接的な原因となります。 |
| 内部統制・監査対応の脆弱性 | Excelは誰でも容易に数式や数値を変更できるため、データの正確性や網羅性を担保することが困難です。計算根拠の追跡や変更履歴の管理が難しく、監査法人に対して十分な説明責任を果たすことができない可能性があります。これは、内部統制上の重大な欠陥と見なされるリスクをはらんでいます。 |
| 情報共有とデータ活用の非効率性 | リース契約に関連する情報は、経理部門だけでなく、資産を実際に使用する事業部門や契約を管理する総務部門など、複数の部署で必要とされます。Excelファイルでの管理は、リアルタイムでの情報共有が難しく、部門間で古い情報が参照されるといった非効率を生み出します。 |
プロシップ等のリース管理システム導入のメリット
Excel管理が抱えるこれらの課題を解決し、新リース会計基準へスムーズかつ正確に対応するためには、リース管理システムの導入が極めて有効な手段となります。株式会社プロシップなどが提供する専用システムは、単なる業務効率化ツールにとどまらない、多くのメリットをもたらします。
| メリット項目 | 具体的な効果 |
|---|---|
| 計算の自動化と正確性の確保 | 契約情報を入力するだけで、使用権資産・リース負債の計上から、毎月の減価償却費・支払利息の計算、さらには複雑な再測定計算までを自動で実行します。これにより、ヒューマンエラーを抜本的に排除し、会計処理の正確性を飛躍的に向上させます。 |
| 契約情報の一元管理と業務効率化 | 全てのリース契約情報をデータベースで一元管理できます。契約期間、リース料、利率といった基本情報から、資産の状況、償却スケジュールまでを網羅的に管理し、必要な情報をいつでも迅速に検索・確認できます。また、会計システムと連携可能な仕訳データを自動生成する機能もあり、決算業務の大幅な効率化に繋がります。 |
| 内部統制の強化と監査対応の円滑化 | ユーザーごとのアクセス権限設定や、データの変更履歴(監査ログ)の保存機能により、不正なデータ改ざんを防ぎ、セキュリティを強化します。計算プロセスや根拠が明確になるため、監査法人からの問い合わせにも迅速かつ正確に対応でき、企業のガバナンス強化に貢献します。 |
| 経営判断に資するデータ提供 | 正確なリース資産・負債の情報をリアルタイムで可視化することで、ROA(総資産利益率)などの経営指標を正確に把握できます。これにより、資産効率を意識した経営判断や、将来の設備投資計画の策定に役立つ、価値ある情報を提供します。 |
新リース会計基準への対応は、一時的なイベントではなく、今後継続していく恒常的な業務です。将来的な業務負荷の増大や潜在的なリスクを考慮すれば、早期の段階でシステム化を検討することが、企業の持続的な成長を支える重要な経営判断と言えるでしょう。
まとめ
本記事では、新リース会計基準の概要から適用時期、具体的な会計処理、そして実務への影響までを網羅的に解説しました。新リース会計基準の最大の結論は、これまでオフバランス処理が可能だったオペレーティング・リースを含め、原則すべてのリース契約を「使用権資産」と「リース負債」として貸借対照表に計上(オンバランス化)する点にあります。
この変更により、企業の資産と負債がともに増加し、ROA(総資産利益率)などの経営指標が悪化する可能性があるため、特にリース契約の多い企業にとっては財務戦略の見直しが不可欠です。対応の第一歩として、まずは自社が結んでいる全てのリース契約を漏れなく洗い出し、会計方針を決定することから始めましょう。
契約数が多く管理が複雑化することから、Excelでの属人的な管理には限界があります。そのため、プロシップをはじめとする専門のリース管理システム導入も視野に入れ、計画的に準備を進めることが、新基準へスムーズに移行するための鍵となります。